地方攻略に着手、「予想以上の売れ行き」 ティラワで現地生産を開始したエースコック・ミャンマーの平野彰社長

エースコックがティラワ経済特区(SEZ)に建設していた工場が7月、正式に操業を開始した。現地生産で大量の商品をミャンマーに送り込む同社が現在攻略に着手しているのが、バゴーやタウンジーといった地方都市だ。ベトナムで圧倒的なトップシェアを確立した同社がなぜ地方に狙いを定めているのか。エースコック・ミャンマー社長の平野彰さんに聞いた。
――2,000万ドルを投じたティラワの工場がとうとう動き出しました。これにはどんな意味があるのでしょうか。

 

そうですね。おそらくミャンマーで初めて、ゼロから立ち上げた日本式の食品工場と言うことができると思います。日本並みの衛生管理をしています。

 

現在1ラインが稼働しており、フライめんの生産工程と、包装工程があります。スープなどはベトナムから調達しています。一分間に600食を生産することができます。現在は交代制を組んでいませんが、それでも年間で7,250万食が生産できる計算になります。これは、ミャンマーの即席めんの消費量は5億5,000万~6,000万食とされていますから、だいぶ大きな生産能力になります。ただ、ミャンマーでは現在も年間1億食ずつ消費量が伸びているとも言われており、ベトナムなどの例を見ると、現在の10倍の消費量となってもおかしくはありません。そうした将来の需要を見込んでいます。

 

――ティラワ工場の稼働によって、販売体制を見直したと聞いています。


平野彰(ひらの・あきら)さん 

1962年生まれ、大阪府出身。1984年にエースコック入社、海外事業部長などを経て、2014年にヤンゴン支店長。2015年にエースコック・ミャンマー社長に就任した。

これまでは当局の規制によって現地の販売代理店経由で販売していたのですが、ティラワに工場を作れば、現地で生産した商品であれば自ら販売することができます。そこで、ヤンゴンやマンダレーなどの大都市では、直接販売する体制にしました。販売店が現在行っている営業方法には、物流などの視点から非効率的な部分もありましたので、これを効率化することが課題です。

 

一方で、現在重視しているのは、これまで手をつけられなかったバゴーやタウンジーなどの地方都市です。即席めんは、富裕層が一度に3つも4つも食べるというような性質の商品ではありませんので、やはり一般の人に広く食べていただかなくてはいけません。そのためには、ヤンゴンやマンダレー以外の地方はとても重要なのです。地方向けには、各都市の有力代理店と契約して販売する方式を取りました。すでに25の拠点ができており、今年度末までに55拠点とする計画です。

 

地方都市では多くの場合、中心的な大きな市場に、卸と小売りを兼ねたような店舗があり、そこに周辺の町や村から小売業者が仕入れに来る流通形態となっています。こういった店は、声をかけるのもはばかられるほど忙しく、小売業者であふれています。ここに商品を並べれば周辺の村まで流れていくことになるので、確実にこういった市場の店舗を抑えていくことができるパートナーを選んでいます。

 

販売体制を見直したところ、計画を上回る売れ行きとなっています。生産が追いつかず、一部では品薄状態となってしまいました。現在販路を開拓中の地方都市に対し優先的に商品を回しています。今後、ティラワの工場のスタッフが作業に慣れてくると生産量も増えるので、この状況はもうすぐ解消できるのではないかと考えています。

 

――これと同時に新商品を発売しましたね。今後はどのような展開を考えていますか。

 

「シュルッ」というブランドで7月に発売しました。ミャンマー語で、食べ物を前につばを飲み込む様子を表現した名前です。「シュルッ」にはトムヤムクンに似た「ホットアンドサワーシュリンプ味」と、ココナッツ風味の「クリーミーチキン味」があります。

 

流通関係者からは、「200チャット(=約16円)を超える商品は売れない」という声をよく聞きましたので、「シュルッ」の小売価格は200チャット程度と想定しました。また、従来250チャット(=約20円)程度だったカレー風味のブランド「ヨーヤー」のレシピを改良し、200チャット程度までコストダウンしました。しばらくはこの2ブランドを中心に、販路を広げていきたいと思います。これに加え、高級スーパーなどで売れている「ハナ」というブランドもあります。各ブランドとも、年内に新しい味の商品を投入し、ラインナップを強化したいと考えています。

 

【インタビューを終えて】

ベトナムの大成功という成功体験を持つエースコックは、本気で5,000万人の市場を押さえようとしている。それは、ティラワ工業での現地生産、現地スタッフによる商品開発、地方部への攻勢などに表れている。日本の技術で作られるミャンマーの味が、ミャンマーにどう根付いていくのかが楽しみだ。(掲載日2017年8月4日)