「ミャンマーの知られざる魅力を発信したい」 HISヤンゴン支店長の白川一城さん

 

2018年10月から観光ビザが不要になったことなどで注目を集めるミャンマーの観光業界。しかし観光客の呼び込みはそんなに簡単なものではないと指摘するのが、大手旅行代理店のHISのヤンゴン支店長の白川一城さんだ。そんな中でもミャンマー人のアウトバウンドに力を入れるという。この国の観光業の将来と同社の戦略について聞いた。

 

――2018年10月から日本人はミャンマーの観光ビザが不要になるなど、前向きな動きが出てきていますが、最近の傾向はどうでしょうか。

 

はい。確かに日本人の訪問数は増えてはいるのですが、数パーセント増にとどまっており、世の中の期待ほどは増えていないですね。母数が少ないですので、2割くらい増えても本来はおかしくはないのです。日本人の年間のミャンマー訪問者数は約10万人で、タイの10分の1以下になっています。このことは、日本人がミャンマーに来ないのはビザ以外の要因も大きいということを示しています。


白川一城(しらかわ・かずき)さん 

1975年仙台市生まれ。米国留学を経て1998年にHIS入社。営業などの経験を積み、2016年にヤンゴンに赴任、現在はヤンゴン支店長。

例えば、旅行代金が高いことがあります。日本からバンコクですと3万9,000円台でもありますが、ヤンゴンでは8万9,000円台などで、そのお金でバンコクに2回行けることになります。国内線も高くつきますから、人気のバガンなどを組み込むと、さらに割高になってしまいます。国内線が高いのは、どの国内航空会社も赤字体質で値下げができないことが要因の一つです。しかし、それでもアイデアを絞って、なんとかバガンに行けるようなプランを考えました。実は、バンコク―マンダレー間は航空便が出ています。バンコクからマンダレーまで飛行機で行き、そこから車でバガンへ向かうプランをタイで売り出したところ、大好評でした。来年にはバガンは世界遺産に登録されるでしょうから、それに合わせて、日本からバンコク経由でバガンに行くルートを売り出すことを準備しています。

 

また、日本にはミャンマーの情報が少ないですね。ミャンマーには知られてない名所がたくさんあるため、ミャンマーの見どころを紹介するインターネットチャンネル「しらちゃんねる」を放送しています。週1回でもう47回になりますが、自分でやっているので大変です。あまり知られていない観光資源としては、インレー湖の近くにはとてもミャンマーの野性味がある温泉があります。近くで住民が洗濯をしていたりと、独特の雰囲気があります。そうした知られざる魅力を日本に伝えていきたいと思っています。例えば、ラカイン州は情勢の悪化で観光客が減っていますが、ガパリのビーチは素晴らしいものがあります。人も少なくて海を占領したような感覚になります。ガパリのツアーを組んで打ち上げの一部を復興のために寄付するという企画も行っています。

 

――ミャンマーからのアウトバウンドについてはいかがでしょうか。

 

実はアウトバウンドの割合は増えています。日本人駐在員の旅行や、ミャンマー人向けの招待旅行なども含めると、アウトバウンドが6割を占めるようになっていますね。近くマンダレーに支店を開きますが、そこではミャンマー人富裕層などのアウトバウンドに力を入れます。日本の旅行会社であることを前面に出していこうと思います。

 

ミャンマー人の日本旅行は、大きく二つに分けられます。ビザの取得が難しいこともあり、ひとつは超富裕層のリピーターの人ですね。定番コースでは飽き足らず、北海道の名所や長野などにも行きたがります。その一方で、東京や京都などゴールデンコースを好む人もいますね。ただ、アウトバウンドが増えるには時間がかかります。一度、森崎ウィンさんのコンサートツアーを企画したことがあって、とても反響が大きく、フェイスブックで「行きたい行きたい」という声であふれていたのですが、価格やビザの問題で実際の参加者はゼロでした。まだまだ解決しないといけない課題がありますね。

 

――今後はミャンマーでどのような戦略を描いていますか。

 

そうですね。旅行会社だけでなく、サプライヤーにもならないといけないと思います。HISは実はロボットが接客するホテルなども展開しています。ミャンマーでも、旅行の手数料だけのビジネスでは成り立たなくなる時代が来ると思います。5年後くらいにはこうした方向にシフトする必要がでてくるでしょう。そのためには、他社との協業やM&A(合併・買収)なども進める必要があると思いますね。

 

【インタビューを終えて】

旅行会社という人を楽しませる企画を作る人には、アイデアマンが多い。白川さんはその中でも、ビジネス環境が厳しいミャンマーで、どうやって魅力的な商品を作っていくかを突き詰めて考えているようだ。海外旅行が一般的になったタイには現在、HISの支店が33店舗もあるという。ミャンマーの観光産業はタイやカンボジアに比べ未熟だが、この時期に土台を固めることは将来への布石になるに違いないだろう。(掲載日2018年12月21日)