カレー屋のつもりが引っ越し屋を開業! 足元からビジネス発掘するゼン・ソリューションの鈴木賢さん

閉塞感のある日本を飛び出し、海外で起業する――。そんな選択肢を選ぶ若者がミャンマーにも出てきている。引っ越しサービスなどを手掛けるゼン・ソリューションを立ち上げた鈴木賢ゼネラルマネジャーもそのひとりだ。不動産開発などに携わる中で、日本の企業・家庭向けの引っ越しというニーズを発掘した。海を渡ったミャンマーで、どうして引っ越しビジネスに行きついたのか、その思いを聞いた。
――もともとリクルートでキャリアを積んだと聞いています。リクルートを離れて起業する人は多いですが、どうしてミャンマーだったのですか。

 

純粋にビジネスとして商機があると思ったからです。「ミャンマーが好き」どころか、ミャンマーに来たことすらありませんでした。最初に始めようと思ったのは、実は日本人ビジネスマン向けのカレー店でした。アジアには日本のチェーンカレー店があるのに、ヤンゴンにはありませんでした。そこで、単身ビジネスマン向けのカレー店を始めようと仲間と計画していたのです。

 

しかし、2012年にリクルートを辞めてヤンゴンに来てみると、賃料が想像以上に高騰していました。当初の計算の3倍もの家賃がかかることになり、採算が合わないといことで断念しました。しかし、ヤンゴンに来てビジネスをすると決めていたので、ちょうど縁のあった不動産関連企業に業務委託という形で参画しました。そこで今まで不動産の仲介や開発を行っていました。

 

――手掛けた物件としてダウンタウンのお手頃価格のホテル、ヤマホテルがありますね。

 

はい。ビジネスマン向けのドミトリー主体のホテルとしてヤマホテルを開発しました。建物を借りて改装して運営する形で、私をはじめ、3人の日本人が運営に携わっていました。先ごろ、別の日本企業に事業譲渡し、あと数か月で私も経営から手を引くことになります。


鈴木賢(すずき・けん)さん

 

1985年生まれ、埼玉県出身。慶応大学卒業後2008年にリクルート入社、無料情報誌の編集にかかわる。2012年に渡緬、ステージア・キャピタル・ミャンマーに参画してヤンゴンの不動産開発に携わったのち、2017年にゼン・ソリューションを創業。引っ越しなど。

ヤンゴンのホテル業界は、メリアやロッテなど高級ホテルが次々と進出して競争が激化しています。価格は下がらなくても、空室が目立つようになってきています。また、おしゃれな低価格ホテルも増えています。ビジネス環境としては決して良くないですね。

 

――さて、今回引っ越し業を始めたとのことです。ユニークな着眼点と言えるのではないかと思いますが、狙いは何でしょう。

 

今年4月から仲間と一緒にゼン・ソリューションの事業を始めました。まず、日本企業や個人の引っ越しを手掛けています。これは、私がヤンゴンに来てから、「お金をもらってやったこと」をリストアップした中から浮かび上がってきたのです。そのリストには30個ほどの項目があったのですが、キャッシュフローなどの点からみると、引っ越し業がダントツで有望だと判断しました。

 

引っ越しのトラックやスタッフはそのたびに調達しますので、しっかり見積もりをすれば基本的に赤字になりません。現在、大手日系物流会社がヤンゴンの引っ越しを行っていますが、我々はその半額でサービスが可能です。その一方で、日本のようにきちんと梱包して運ぶことや、発電機やエアコンの取り外しなどの工事もワンストップで行うなど手厚いサービスで勝負できます。将来的に日本の大手引っ越しサービスがさらに進出したとしても、競争力を保てると考えています。

 

実は、引っ越し業のメリットとして、不要となった事務用品や家具をもらえることがあります。そうして入手した家具や家電のリサイクル業にも力を入れていきます。例えば、オフィス用の大きな机が数百ドルで売れたこともありますし、廃材の鉄骨などもいい値段で売れます。

 

先輩のビジネスマンの方々からは、「ひとつの事業に集中したほうがよい」というアドバイスを頂くのですが、ミャンマーにおいてはそれは間違いだと思います。多くの仲間と組んで、多くのビジネスを始めるのがよいと思います。私は不動産開発をしてきましたが、許認可などで事業が止まるとそれですべての事業が止まってしまうリスクがありました。理想的には「10ほどの小規模な事業を行い、1つの事業から月5万円の収入を得て合計50万円になる」というようなパターンが理想だと思っています。引っ越しの他にも、アパレル関係の人材育成や、ミャンマー人向けの女性用下着の販売なども検討しているので、順次事業化したいと思っています。

 

【インタビューを終えて】

 国際的な調査でも指摘されている通り、ミャンマーのビジネス環境は決して良くはない。それでも、この国に将来性を感じてビジネスを興そうという若者がいる。鈴木さんが目をつけたのは、引っ越しというニッチではあるが、初期投資が少なく確実な需要と利益が見込める事業だ。こうした挑戦者が試行錯誤を繰り返しながら、成功に近づいていくのだろう。そうした若者に出会うことができるのも、ヤンゴンの魅力のひとつではないだろうか。(掲載日 2017年7月7日)