「若手のクリエイター育てるエコシステムを」 動画配信アプリを開発、キューブデジタルのラビット社長

急速にスマートフォンが普及するミャンマーでは、次々と新しいインターネットサービスが登場。その一つが、9月にリリースした映像配信アプリ「ヨッシン(映画)・ゴー」だ。開発するのはミャンマー発のベンチャー企業、キューブデジタルだ。激変するメディア環境の中で、どのような商機を見出しているのか、戦略を聞いた。
――ミャンマーに携帯電話が普及しだしたのは2011年の民政移管後です。最近は通信速度が劇的に改善し、スマホでビデオ映像を楽しむ若者も多くなりましたね。そんな中で動画配信サービスのヨッシン・ゴーはどのような魅力を訴えているのですか。

 

ヨッシン・ゴーは、スマホアプリやパソコンなどを使って、映画などの動画が楽しめるサービスです。現在は無料サービスを行ってユーザーを呼び込む段階ですが、そのうち課金サービスに移行します。現在は600タイトルほどですが、近いうちに1,000タイトルを揃える予定です。

 

この事業の目的は2つあります。1つはミャンマーのコンテンツ産業のエコシステムを確立することです。発展の途中であるミャンマーのコンテンツ産業は、まだビジネス的に成り立っている部分は大きくないのです。それは、大企業と小さな会社やクリエイターが集まってビジネスの仕組みを形作るエコシステムがないからです。ここで、私たちの動画配信サイトがプラットフォームを提供することができると思います。また、著作権などがミャンマーではしっかり保護されておらず、違法DVD業者が横行しています。ヨッシン・ゴーのような合法的なビジネスの仕組みを作ることも大切だと考えています。


キーラン・ラビットさん 

 

1979年アイルランド生まれ。金融関係などのキャリアを経て、スペインなどでITビジネスの経験を積む。2014年にミャンマーにわたり、ITビジネスに携わった。2017年4月にソフト開発者やミャンマー人らの仲間とともにキューブデジタルを立ち上げ、社長に就任した。

2つめは、ミャンマーの消費者にあった、便利なコンテンツの楽しみ方を提供することです。ここでは、世界中で人気のあるメインストリームの作品だけではない、ミャンマーの好みに合うマイナーなコンテンツも楽しんでもらうことを目指しています。そのためにミャンマー国内や国外の独立系制作者とネットワークを築き、コンテンツを調達します。例えば、スポーツなどは有望です。サッカーなどはとても人気がありますし、またミャンマーの伝統的格闘技のラウェイも面白いと思います。また、ワッタン映画祭を支援するなどして、ミャンマーの若手クリエイターを後押しして、よい関係を作っています。そのほか、教育関係のコンテンツなども入れていきたいと思います。

 

――ミャンマーのネットサービスのネックは、物流と決済手段と言われています。動画配信では商品を運ぶ必要がないので、物流面の問題は発生しませんね。もう一つの決済はいかがでしょう。様々な支払方法が登場していますが、まだ何が主流として定着するかわからないところだと思います。また、前払い方式のミャンマーの消費者は、データ通信料がかかることを嫌がりますね。

 

決済方法は様々な方法を用意しています。クレジットカードの利用者はまだ少なく、携帯電話系の電子マネーなどが有力と思います。データ通信料については確かにミャンマーの消費者はコストを気にする傾向にあります。動画の容量を少なくして配信できるように工夫しています。また、1本の時間が短めのコンテンツも揃えます。

 

アジアの周辺国に比べ、ミャンマー政府はIT環境を整備するという確たる方針を打ち出していないと思います。タイなどがITインフラ整備に巨額の予算を割いていることに比べると対照的です。これはミャンマーの発展にとって重要なことですから、欧州商工会議所などを通じて提言していきたいと思っています。

 

【インタビューを終えて】

ミャンマーでは通信状況の劇的な改善によって、様々なネットサービスが登場しているが、採算がとれているのはごくわずかとみられる。また、動画配信サービスはマレーシア大手の「iflix」もミャンマーに進出している。こうした中で、ミャンマー人の好みに合った作品を提供することで活路を見出そうとしているのがラビットさんだ。動画の楽しさを実感しつつあるミャンマー人に対して、有効なビジネスモデルを打ちたてることができるのか、今後も注目したい。(掲載日2017年12月8日)