ダンス通じて「子どもの可能性を広げたい」 児童養育施設「ドリームトレイン」で親代わり、那須田玲菜さん

何らかの理由で親元で暮らせない子どもたち約170人が生活する児童養育施設のドリームトレイン。日本のNGO「ジャパンハート」が支援する。その施設で献身的に働いているのが、プロジェクトダイレクターの那須田玲菜さんだ。得意のダンスを通じて子どもに接するだけでなく、企業と施設の橋渡し役として修学旅行や図書館建設など様々な取り組みを行う。その思いを聞いた。
――ドリームトレインには、いろいろな企業や団体から支援を受けていますね。サッカーや野球の教室に始まり、図書館建設や科学教室の開催、インターンの受け入れなど外部の企業などのパートナーの巻きこみ方が上手だと思います。子どもたちのために何かしたいと思っていても、慣れない日本企業は何をしていいかわからないところがありますので、那須田さんのような人がいると話が進みやすいのではないかと思います。

 

日本の企業や団体の方々には、大変多くのご支援をいただいています。ヤンゴンの日本人社会は狭いですので、その中でお話をしているうちに、いろいろな方にお声がけいただいているという感じですね。本当にいろいろな形の支援を頂いています。日本の教育関係の組合の支援で、遠足ができるようになりました。チャウンタービーチに行ったのですが、初めて海を見た子どもたちは大はしゃぎでした。施設にいる子どもは、自分たちの境遇に引け目を感じてしまうことも多いので、自慢できることがあるのは素晴らしいことと思います。また、サッカーでは、いくつものJリーグのチームに来ていただいていますし、ミャンマー女子代表監督だった熊田喜則さんいも指導いただいたこともあり、なんと私たちの通う学校のサッカーチームが13歳以下のヤンゴン大会で優勝したのです。15人のメンバー中にドリームトレインの子どもが11人もいました。パソコン教室など各企業の得意分野の支援を頂いています。

 

支援されるだけでなく、子どもたちには、しっかりと感謝をすることと、また支援を受けたからには頑張らないといけないということを教えています。また、支援していただいた方々に対しては、結果について報告させていただくなど、日本水準を心がけています。


那須田玲菜(なすだ・れいな)さん 

1987生まれ、静岡県浜松市出身。小学校時代からダンスを始め、高校卒業後にニューヨークにダンス留学、モダンダンスを学ぶ。帰国後にダンス教師などの仕事に就くも、国際協力の道を志してNGO「ジャパンハート」の門を叩き、2014年からヤンゴン駐在。

――ご自身もダンスを教えていますね。ダンスで米国に留学していた本格派と聞いています。どうしてドリームトレインで働くことになったのでしょう。

 

高校を卒業して、プロになるためにニューヨークに留学して、ダンス学校に通う傍ら、ダンサーとしても活動していました。その後、日本に帰国してダンスを教えるなどしていたのですが、友人が難病にかかったことや東日本大震災などがあり、いまやりたいことをやらないと後悔すると思い、国際協力の道を選んだのです。ニューヨーク時代にアフリカ出身者など多くのバックグラウンドを持った友人に触れたこともあります。ジャパンハートでインターンをしているうちに誘われて2014年にヤンゴンに来ることになりました。始めは無給だったのですが、その後正式に採用されました。

 

ドリームトレインに来た当初から子どもにダンスを教えています。ミャンマーでは美術や体育の授業がないので、自分の頭にあることを表現する手段を学ぶ場があまりありません。男子はサッカーがあるのですが、特に女子には、何か打ち込めるものが必要だと思いました。9月には初めてきちんとオーディションをする形でチームを組んで、ヤンゴンのレストランで踊る機会がありました。ダンスが好きな子ばかりなので、鏡もないのに、どんどん上達しますね。私の指導は厳しいと思われているようです。子どもが「私にはできない」ということを言ったなら、「あきらめてはいけない。さあ、『できる』って10回言いなさい」と話をします。でも、子どもたちの毎日の世話はミャンマー人スタッフがすることが多いので、私は外からお金を持ってくる「お父さん役」ですね。

 

――就職支援などもしていますね。子どもたちのためには、何が求められているのでしょうか。

 

ある意味でドリームトレインの子どもたちはいろんな支援を頂いていて、恵まれている面もあるのです。その分、生徒の学業面での成績を上げることも、重要視しています。ミャンマーでは多くの子どもが通うように、塾にも通わせています。

 

施設から出た後に、経済的に独立して生活ができるかどうかは重要です。子どもたちに広い可能性をみせてあげたいと思います。ほとんどの子どもはミャンマー人スタッフがアドバイスや紹介をしていますが、大学まで行ったような「もっといいチャンスがあれば」と思う子どもには、私が日本企業にその子にあう職場がないかと探すこともあります。日系企業からインターンの機会を頂くこともあります。美容師になりたい子を、日系の高級美容室に紹介したこともあります。就職後にその子が仕事や人間関係に悩んだ時には、引き続き施設でアドバイスができますので、企業にとってもメリットがあると思います。

 

【インタビューを終えて】

那須田さんと話をしていると、「そのアイデアいいじゃないですか。ぜひうちでやってくださいよ」という言葉が飛び出す。子どもたちのためになることは、自分が面倒くさくても、外部の力を引き込んでどんどん行おうとする姿勢だ。日本でも、教育に外部のボランティアや企業などの力を取り入れることが叫ばれているが、うまくいっていない事例も多い。そうした中、那須田さんのフットワークの軽さによって、子どもたちは多くのチャンスを得ているに違いない。その子どもたちがどう巣立っていくのか楽しみだ。(掲載日2017年11月24日)