「若者のトレンドはオンラインショッピングから」 ネット中心の広告会社グルーヴズ・アジアCEOの三木宜武さん

変革期のミャンマーでは、流行や消費動向も目まぐるしく変わる。その時代の潮流を見据えて、地に足をつけるマーケティング活動をすることは、ミャンマー市場をにらむ企業にとって欠かせないことだ。ミャンマーでは数少ないこの分野の専門家のひとりが、広告会社グルーヴズ・アジア最高経営責任者(CEO)の三木宜武さんだ。ミャンマーのトレンドの最先端で何が起こっているのかを聞いた。

 

――三木さんは2012年にミャンマービジネスを始めて以来、マーケティングやプロモーションなどに関わってきたと聞いています。変化が激しいミャンマーの消費環境ですが、現状をどう見ていますか。

そうですね。僕が注目しているのは、これからの消費を作っていく30歳以下の若者です。若者のファッションで言いますと、現在のトレンドはオンラインショッピング

から作られていますね。ミャンマーのオンラインショッピングは、フェイスブックに写真が掲載されていて、注文すると宅配してくれ、品物と同時に料金を支払うシステムです。ここ半年か1年ほどのことですが、これが流

行のきっかけとなっています。例えば、フェイスブックの人気ショッピングサイトで掲載された商品に人気が出ると、ほかの低価格のサイトが似たような商品を仕入れ

るようになり、最後に「ガモンプイン」「セインゲイハ

ー」などのショッピングセンターに卸す大手業者が現れるという流れです。3か月ほど前にアディダスのジャージが流行ったのですが、やはりオンラインショッピングがきっかけでした。ミャンマーではファッション誌が流行を作るまでの力を持っていないので、その役目を果たしていますね。

 

――実際にはどのような仕事の進め方をするのですか。


三木宜武(みき・のりたけ)さん 

1975年大阪市生まれ。日本大学を卒業後、アパレルやIT業界を経て独立。マレーシアでのIT関係企業などで働いたのち、2012年からミャンマーでビジネスを始める。現在グルーヴズ・アジアの創業者兼CEO。

自分たちは広告代理店といいますか、マーケティングエージェンシーと考えています。ITを使ったプロモーションやブランディングがメインになりますね。例えばフェイスブックページを使う場合には、何を伝えるのかを顧客と一緒に決めて、月間スケジュールを立てます。AIDMA(認知、興味、欲求、比較、行動)の各段階にアピールできるように計画します。こうしたほどんどの実務はミャンマー人スタッフが行えるようになっており、うちのスタッフと顧客のミャンマー人スタッフがやり取りする形をとっています。基本的に日本人が入らなくてもよい仕組みを作っています。顧客はミャンマー企業が多いのですが、日本企業の場合でも僕は日本人マネジャーと最初のプランニングや予算の話などはするのですが、そのあとの実務はミャンマー人に任せます。そのミャンマー人の方向性が間違っていないかなどの確認を、顧客の日本人と一緒に行います。

 

――この分野は高い創造性が求められることもあり、必ずしもミャンマー人の実務家が多くありません。そんな中でもグルーヴズには多くのミャンマー人スタッフがいますね。

 

はい、いま53人の社員を抱えていて、日本人は僕一人です。23歳から25歳くらいが多く、モチベーションが高いスタッフばかりですね。大卒は40%しかとっておらず、「死ぬ気で仕事ができるかどうか」を基準に採用しています。やる気のある人は半年程度でリーダーに引き上げます。今28歳のマネジャーがいますが、入社時18万チャット(=約1万4,400円)だった月給が1年で50万チャット(=約4万円)になりました。その代わり、プレッシャーも強いですよ。書いた記事の数や営業電話の本数などを重要業績評価指標(KPI)化し管理しています。顧客への提案にもKPIを入れることにしており、それを評価してくれる顧客も多いです。また、スタッフと顧客との接点を増やし、ボスのためではなく、顧客のために仕事をしてもらうよう促しています。顧客への責任を実感すれば、徹夜や休日出勤をしてでも働いてくれます。

 

――今後力を入れていきたいことを教えてください。

 

ミャンマーでは市場が成熟していないため、いい製品やサービスでも、顧客がついていかないという状況があります。経済発展の段階の問題だという人もいますが、収入は増えていますし、僕はどちらかというとお金の使い方やマーケティングの問題だと思います。ミャンマー人の大きなお金の使い道は、食べる、服を買う、家電くらいでしょうか、あまりバリエーションがありません。知識がないので、お金を使わないのです。「僕はこれに金を使う」というスタイルやこだわりを持つ消費者がいない市場では、売り手が明確なコンセプトを打ち出しても響かないのです。市場の開拓が必要です。現在、ダンサーのジミーココや、スタイリストのヨーコさんら、市場をリードすることができる強いキープレイヤーが増えてきています。このような人たちが新しい価値観やライフスタイルを提案していけば、多様な分野に興味を持つ人が増え、いずれ新しいライフスタイルが定着すると思います。例えばダンスイベントなど、こうしたキープレイヤーが活躍する場を作ることで、ミャンマーに多様な消費が生まれるようにしたいと考えています。

 

【インタビューを終えて】

ヤンゴンには個性的な日本人が多いが、その代表格のひとりが三木さんだろう。アパレル業界にいただけあって、風貌も個性的で、ミャンマー伝統のロンジー姿のことも多い。ミャンマー人の間に臆せず入っていき、友人を作り、流行を探り出す。そうしたスタイルが会社の内外のミャンマー人に受けているのではないかと考える。三木さんの言葉通り、ミャンマーの新しいライフスタイルを作り出して行ってほしい。(掲載日2018年5月4日)