LCC志向の顧客も取り込むフルサービスキャリア 全日本空輸ヤンゴン支店長の鈴木康之さん

 

仏教遺跡で有名なバガンが世界遺産に登録されたことなどで観光地としても注目されるミャンマー。東京とヤンゴンを繋ぐ唯一の直行便を飛ばしているのが、全日本空輸だ。ヤンゴン支店長の鈴木康之さんに、全日空のミャンマー戦略を聞いた。

 

――2012年に就航した全日空の成田―ヤンゴン便は、ミャンマーで仕事をする日本人ビジネスマンにはなくてはならないものとなっていますね。一方で、格安航空会社(LCC)などが、日本行きのルートでもかなり安い価格を提示しています。

 

そうですね。実は全日空は、1996年に関空―ヤンゴン便を就航させているのです。いったん2000年以降一時休止しましたが、その間もヤンゴンに事務所を置き続けていました。2012年からは成田からの直行便を毎日就航させています。2013年には需要の増加に合わせて、機材を大きくして202席となっています。おっしゃる通り、競争は激化しています。

 


鈴木康之(すずき・やすゆき)さん

 

全日本空輸ヤンゴン支店長。1968年静岡県生まれ。同社入社後はマーケティングや人事労務、空港旅客部門などを経て、2017年にヤンゴンに赴任した。

アジアでは旅客需要は伸びているのですが、価格競争となり利益が出にくい現状があります。こうした中で全日空としては、便利で快適なフルサービスキャリアを求めるお客様とともに、これまであまり飛行機を利用していないLCC志向のお客様も含めて利用していただけることを目指しています。

 

ヤンゴンのスタッフと「Enjoying challenge」を掲げて業務改善を進めた結果、昨年にはなんと定刻出発率が世界の全日空の海外49空港所でナンバーワンになりました。早めに母国語でアナウンスを入れ、準備が整ったお客様から早めにご搭乗頂くなどの様々なアイディアが奏功しました。また、7月26日から5日間限定でタイムセールを行います。10月から来年3月までのヤンゴン発東京行きの往復航空券を360ドル(税サ別)で提供します。総額で400ドル台後半で往復が可能です。成田又は羽田から、大阪・名古屋・福岡への国内便の運賃は、24時間以内の乗継時間であれば無料です。全日空のホームページや、支店に来店でも購入できます。これは、預託手荷物料金等も含めたトータル条件で比べれば、LCCの下を行く価格になります。最近試験的に始めたもので、全日空ヤンゴン地区では大変珍しい取り組みです。

 

――全日空はミャンマーで地元企業と組んで航空会社を立ち上げようと試みるなど、ミャンマーには力を入れていますね。地球規模で展開している全日空がどうしてミャンマーを重視しているのでしょうか。

 

ミャンマーは経済成長、国民所得の増加、航空旅客数の伸びの点で、アジアの中でも最も顕著な地域の一つです。人口も所得も中流家庭も増えるので、マーケットとして大きな魅力があります。1996年から直行便が就航しているという経緯もあります。日本からはビジネス目的でなく、観光客も増えてきました。今後はミャンマーから日本に行く乗客も増やすことが必要ですね。

 

アジアでは、中流家庭が手軽に航空便を利用するようになってきています。こうした需要に応えていきたいと思っています。今すぐにと言う話ではありませんが、ミャンマーで地元企業との合弁で航空会社と立ち上げる方向性なのかもしれませんし、すでにグループにあるLCCを就航させるのかもしれませんし、全日空便を増便することになるのかもしれません。

 

――人材育成やCSR活動にも力を入れていますね。

 

アウンサンスーチー国家顧問も日本に対して人材育成のための支援を期待しています。そこで例えば、ミャンマーの空港で働くグランドハンドリングのスタッフを養成するため、2015年以降、ヤンゴン空港や航空各社から39人の若手スタッフを日本に受け入れています。3年間成田空港で業務を行い、「なぜ手荷物を投げてはいけないのか」といった基本的な考え方や、改善の精神から学ぶことができ、インストラクターになれるようなプログラムです。

 

――バガンが世界遺産に認定されるなど、観光でもミャンマーは脚光を浴びています。観光振興のためにどんな取り組みをしているのでしょうか。

 

昨年には日本人のミャンマーの観光ビザが免除されることになりました。有力な税収であったビザ取得代金を諦めるということですので、ミャンマー政府にとっては英断だったと思います。これには感謝していますし、応えたいと思います。実はバガンの世界遺産認定を見越して、準備を進めてきました。ミャンマーに関心の高いハイエイジ向けのツアーを仕掛けています。また、バガンは雨期でもあまり雨が降らないうえ、ホテルも飛行機も安く、ガイドも空いているので、雨期に旅行してもらうキャンペーンも実施しています。また、ミャンマー観光連盟と協力し、昨年から計6回のミャンマー観光セミナーを日本で開催しました。ミャンマーのことが頭に入っていない方々にも、旅行先の選択肢に入れてもらうような働きかけをしています。そのほか、国際会議や修学旅行も誘致に力を入れていますね。

 

【インタビューを終えて】

東京とヤンゴンを結ぶ直行便は、日緬の絆そのものと言える。鈴木さんによれば、2012年の就航開始直後には数パーセントだったミャンマー人の乗客の割合が、今では2割ほどに増えているという。今後もその絆が太くなっていくことを期待したい。

(掲載日2019年7月29日)