「ビジネスロイヤーは役所を動かす能力が勝負」 外国人顧客集める女流弁護士、チャウモンモンさん

ミャンマーではビジネス関連法の整備が遅れ、官庁の担当者の裁量が大きいことなどが、進出企業のリスクとなってきた。こうした不透明さの中で頼りになるのが弁護士だが、ミャンマーには十分な専門家が育っているとは言えない。そんな中でも、若い有能なミャンマー人弁護士が頭角を現しつつある。多数の外国人弁護士や外国企業と共同で事業を進めるモン&パートナーズのパートナー弁護士、チャウモンモンさんもそのひとり。ミャンマーで法的リスクを回避するために何が必要なのかを聞いた。
――自らが経営する法律事務所モン&パートナーズの他にも、海外の法律事務所の現地代表など、多数の肩書を持っていますね。現在の仕事について教えてください。

 

そうですね。アジアや中東に拠点があるオーストリア系の「ストロハルリーガルグループ」の現地代表をしています。また、マレーシア系のコンサルティングファーム「VIMコンサルタンシー」にも参画しています。こうした関係もあり、欧米やアジアからのビジネスマンが顧客となっています。今、多いのは中国人投資家です。

 

相談内容は多岐にわたります。進出にあたる法律相談から、関係官庁との調整、労務問題、各種の紛争解決などです。また、紛争解決の手段としてミャンマーでも重要になってきている仲裁機関の人材育成のため、研修会を行っています。


チャウモンモンさん

 

1984年生まれ。ヤンゴン大学法学部を卒業後、2010年に弁護士に。現在、モン&パートパーズのパートナー弁護士。オーストリア系のストロハルリーガルグループや、マレーシアのVIMコンサルタンシー(ミャンマー)に参画。ビジネス法務の実務に明るい。

 ――ミャンマーの進出に際して、法的リスクを挙げる投資家が多いのが現状です。中でも、監督官庁の担当者による裁量が大きいことが悩みの種になっています。

 

確かにそうした現状があると思います。担当者によって要求される書類が違う場合もよくあります。そのため、弁護士を選ぶ際には、こうした担当者と交渉し、動かすことができるかどうかがひとつのポイントになります。

 

また、役所の担当者は忙しいため、手続きや規制について十分な説明をしてくれません。例えば、ある事業が認められるパターンが3つがあったとします。しかし、担当者はそのうち1つしか提示しないこともあり、後でもっと楽な方法があったと判明することもあります。こうしたことの繰り返しで時間が無駄になるケースが多々ありますので、現場経験の豊富な弁護士を起用するのが良いでしょう

 

国際的な大手法律事務所を利用する外国企業も多いのですが、彼らは非常に報酬が高く、このコストを抑えたいのなら、ミャンマーの弁護士を頼むのもよいと思います。どの弁護士が優秀かは外国人投資家にはわかりづらいと思いますので、業界に精通した人に評判を聞いてみるのが良いでしょうね。私はミャンマーの他の弁護士や専門家とネットワークを組んで仕事をしていますので、その案件にあった人材を紹介することもできます。

 

――ミャンマービジネスに際して、腐敗の問題が取り上げられることがあります。新政権は腐敗防止を掲げて規制を強化していますが、現場では変化はありますか。

 

うーん、そうですね……。ミャンマー投資委員会(MIC)と投資企業管理局(DICA)はだいぶ清潔ですね。また、入局管理局も大丈夫ですね……。

 

――なるほど、意味深な回答をありがとうございます。ところで、近年はストが頻発しているほか、急にやめてしまう社員も多いなど、労務問題に悩む企業も少なくありません。

 

ミャンマーでは、労務問題は難しいところがあります。各地の労働事務所は、労働者側に立った判断をしがちです。本来は労使双方の言い分を聞いて、事実と法令に基づいて判断するべきですが、会社側の主張などほとんど耳を貸さない担当者もいます。

 

こうした現実の中では、いったん労働者と揉めてしまうと解決が難しくなります。そのため、トラブルが起きた後の解決というよりも、そもそも問題化しない労使関係作りが必要となると思うのです。労働者がやる気を持って仕事ができる環境を整えるのが第一だと思います。

 

――多くの外国企業と仕事をしている中で、日本の投資についてどう考えていますか。

 

ミャンマーに対する米国の経済制裁が解除されたといっても、まだ欧米企業が進出していない分野が数多くあります。こうした分野では、高い技術力やノウハウを持つ日本企業が市場を席巻できる環境が残っています。ミャンマー政府も外国投資を歓迎して、環境整備を進めています。日本企業の進出のお手伝いができればと思っています。

 

【インタビューを終えて】

ミャンマーでは軍政時代から弁護士や裁判官が軽視されてきた経緯があり、十分な法曹人材が育っていないとされる。需要が急拡大する中で、若く優秀な弁護士が活躍の場を広げている。こうした人材の層が広がり、ミャンマー企業や進出企業が必要なリーガルサービスを受けられるような環境が整備されることを願いたい。国民民主連盟(NLD)政権が強調する「法の支配」を本当の意味で実現するには、法曹人材の育成が欠かせない。(掲載日 2017年6月23日)