母国で新しいネット広告を仕掛ける ニュースサイト「チェルモ」CEOの高瀬智也さん①

 テインセイン政権下で対外開放が進められた2011年以降、海外在住のミャンマー人が母国に戻り始めた。ミャンマーの女性向けニュースサイト「チェルモ」最高経営責任者(CEO)の高瀬智也さんも、そのひとりだ。日本企業の現場で身に着けた情報技術(IT)スキルと広告マインドを武器に、ネットを使った新たな広告手法を切り拓く。なぜミャンマーで次々と顧客を獲得しているのか、その秘密を聞いた。

 

――ニュースサイトの「チェルモ」 (http://www.chelmo.tips/)を運営すると同時に、ミャンマー人向け企業の広告も請け負っていますね。ビジネスモデルを教えてください。

 

女性向けニュースサイト「チェルモ」と、ネットを中心とする広告が事業の二本柱ですが、これは両方が相乗効果を持っています。まずチェルモは、血液型占いやファッションなどをミャンマー語で情報発信するもので、フェイスブックページは150万人が購読しています。一方で、弊社は女性向けのネット広告を手掛けています。例えば、日本企業の生理用品のプロモーションでは、ブランド大使になる女性を選ぶミスコンを開催して、その予選から決勝までの様子をサイトで流しています。

ミャンマーの女性に、自分でも手が届くようなシンデレラストーリーを提供したいと思っています。また、こうしたイベントでブランド大使に選ばれた女性は、弊社のサイトだけでなく地元のファッション雑誌にインタビューを載せるなど複数のメディアで情報発信をしています。

 

ミャンマーでネット広告と言うと、フェイスブックの運営などは手掛ける企業は多いのですが、こうしたネットと現実のイベントを組み合わせるようなやり方はしていません。

高瀬智也(たかせ・ともや、チョーへインハン)さん

 

ミャンマー生まれ。18歳で日本に留学、その後帰化している。大学で情報システムを学び、アクセンチュアグループでシステムエンジニアなどを経験。広告会社を経て2012年にミャンマーに戻り起業した。現在ニュースサイトを運営する「チェルモ」の最高経営責任者(CEO)。

――こうした事業はミャンマーではとても斬新ですね。どうしてその手法を選んだのですか。

 

誰もやっていないからです。例えば、いま力を入れているのは動画ですが、これは普通のミャンマーのニュースサイトからすると、データが重くアップするのが大変なことや、制作に手間がかかるので嫌われます。しかし、テレビCMと違い、ネット上の動画は長く残るものですし、本当に興味のあるミャンマー人は、重くてもダウンロードして見ます。日系化粧品メーカーの音楽コンテストの優勝者は、製品のテーマ曲を有名歌手とデュエットするのですが、その映像は90万回再生され、1万2,000人がシェアしています。また、ネットニュースの記事はミャンマーでは、すぐに盗用されあたかも別のサイトが発信源であるかのようになってしまうのですが、動画は修正ができず、作ったまま拡散するという利点があります。

 

女性向けのニュースサイトという切り口も、多数のニュースサイトがある中でも珍しいものでした。女性向けのコンテンツは、ファッションや料理などたくさんありますので、面白いサイトを作りやすいというメリットもありました。ターゲットがはっきりしているので、広告しやすいという点もあります。

 

 ――その一方で、プロモーションイベントも開催するとなると、かなり手間のかかる話ですね。社員は数人ということですが、実際はどのように業務を行っているのですか。

 

多くのフリーランスのミャンマー人と一緒に仕事する方法をとっています。社内の限られた人員で仕事をするよりも、多くの人と仕事をするほうがいろいろな考え方に触れることができるのでいいアイデアが出ます。ただ、広告を作る際などは、きちんとミャンマー語でしっかりと伝えることにしています。こうしたミャンマー人スタッフとの密なコミュニケーションは、なかなかほかの外資系広告会社にはできないことだと思います。

 

今は、着実にしっかりしたコンテンツを作っていく時期で、どんどん新規の客をとるという段階ではありません。急速に拡大すると必ず質が落ちますから。一方で、この国のネット環境は急速に変化していますから、いま成功していることでもいつまでもそうではありません。1~2年くらいするといま僕がやっていることをまねる企業も出てくると思います。そうした変化に対応できるよう、次の手を念頭に仕事をしています。(掲載日 2016年8月26日)