「若い人でも手軽に化粧を」 格安コスメ「キャンメイク」を広めたニラタイさん

日本では、ドラッグストアなどで販売され若者に人気の格安コスメ「キャンメイク」。ミャンマーでそのキャンメイクのブランドを確立したのが、総代理店シャイニー&ビューティーの創業者のニラタイさんだ。ミャンマーの女性になぜ日本の「カワイイ」テイストが受けているのか、その秘密を聞いた。
――ミャンマーの女性にキャンメイクは人気ですね。私の同僚のミャンマー人女性がキャンメイクの大ファンでした。日本では、その価格から高校生らに人気ですが、ミャンマーでは格安のイメージはなく、高級なブランドとして認識されています。

 

そうですね。キャンメイクは、日本では「プチプラコスメ」と呼ばれている若者でも気軽に購入できる価格帯の商品です。一方で、ミャンマーではもともと、化粧をすることそのものがぜいたくだと思われています。私はこれを若い人でも手軽にできるようにしたいと思いました。化粧をすることで、女性は自信が持てるようになるので、そうした希望を提供したいと思っています。ミャンマーでは、20代~30代の働く女性をターゲットにしています。10万~30万チャットの月収がある人たちですね。

 

今のミャンマーでは、キャンメイクのような「カワイイ」イメージのコスメはほかにありません。目元は黒く、唇は真っ赤な濃い化粧をする芸能人が多いですよね。最近は、韓国ドラマの影響で、韓国や日本のような化粧を好む若者も増えています。キャンメイクは日本で作っていますので「CANMAKE TOKYO」としてそのことを強調しています。ほかのミャンマーに進出しているブランドと全く違うことが、キャンメイクの有利な点ですね。


ニラタイ(Ni Lar Htike)さん 

キャンメイクのミャンマーでの総代理店シャイニー&ビューティーの創業者でダイレクター。ミャンマーで大学を卒業したのち、日本で日本語学校、専門学校を卒業。日本のIT企業で働く中で起業し、中古家電のミャンマーへの輸入などを手掛ける。2011年にミャンマーにキャンメイクの1号店をオープン。ヤンゴンでは、ミャンマープラザやトーウィンセンターなどに店を構える。

1号店は5年前にトーウィンセンターに出したのですが、無理をして大きな店舗にして、まずブランドイメージを確立することを心がけました。雑誌にも広告を出していますが、最近若者は紙媒体ではなくフェイスブックばかり見るようになっているので、ブロガーとコラボしたプロモーション活動を行っています。

 

――そもそも、どうしてキャンメイクをミャンマーに紹介しようと思ったのですか。

私が日本留学時代に、大好きだったのです。今でも使っています。特に、クリームチークをよく使っていました。ミャンマーにいた頃は、パウダーチークしか知らなかったので、のりが違って自然な色合いの出るクリームチークにびっくりしたのです。安くて高品質なキャンメイクをミャンマーで売りたいと思い、何人もの人に紹介してもらい、キャンメイクを生産する井田ラボラトリーズの担当者に会うことができました。その後1年ほど交渉を重ね、ミャンマーにも来てもらい、独占的な代理店となることができました。

 

――5年で30店舗以上、約80人のスタッフを抱えるようになりました。

 

ヤンゴンに8店舗、マンダレーに11店舗あります。そのほか、ネピドーやバゴー、ラーショーなどにも店があります。現在、マンダレーでの販売が好調で、店舗を増やしているところです。テナントのブランドを重視するヤンゴンのビルのオーナーと違い、マンダレーのオーナーは人間関係を重視するので、一緒に食事するなどして、自分という人間を理解してもらうことが大切になります。

 

社員には、できるだけ仕事を任せるようにしています。ミャンマーではトップダウンの経営が主流ですが、私は「私がいなくても決められる」状態にしたいと思っています。まず、「この範囲の予算は自分で決めていい」という権限を明確にして、それで社員同士で話し合ってもらいます。私は参加せず、あとでどんな話をしたかの報告を受けます。自分でやることが大事なのです。このやり方にしてから、スタッフが自分で考えて意見を言えるようになってきました。今では、頼もしい仲間が育ってきています。

 

はじめの頃は「お客様が大事」と思っていたのですが、経営をしているうちに少し変わってきて、今は「社員が大事」と思うようになりました。社員が生き生きと仕事をしていないと、お客様にもいいサービスができませんよね。日本企業のように、社員旅行もやっています。チャウンターのビーチに行くのですが、とても喜んでもらえます。売り上げの目標を達成した人には、海外研修のチャンスもあります。今年は4人がタイに行きました。社員はキャンメイク発祥の日本にも行きたがりますね。原宿などのファッションも見せてあげたいですね。

 

――この先の目標は何でしょうか。

 

いろいろ別のブランドからも代理店契約のお話を頂くのですが、今のところ、キャンメイクに注力するようにしています。自分が自信を持って薦められるものでないと、売りたくないという気持ちもあります。ただ、キャンメイクが安定すれば、ほかのブランドを扱うことも考えたいと思います。

 

いつかは自分の化粧品ブランドを作りたいと思います。高級ブランドではなく、ミャンマー人が気軽に手が届くブランドにしたいと思っています。

 

【インタビューを終えて】

留学先の日本で出会った化粧品を大好きになり、好きが高じてライフワークにしてしまったのがニラタイさんだ。テインセイン政権になる前にいち早くミャンマーの化粧品市場に食い込み、ライバルが力をつけないうちにブランドを確立した。

 

キャンメイクを製造する井田ラボラトリーズからすれば、初めて訪ねてきたニラタイさんは、何の実績もないただの若い外国人女性だったはずだ。そんなニラタイさんが会社を説得して総代理店となることができたのは、何よりキャンメイクが好きだという情熱があったからに違いない。今後もその大好きなコスメの魅力をミャンマーに広めていってほしい。(掲載日 2016年11月4日)