空白地帯に出店、2年で販売台数6倍に 現場主義貫くホンダミャンマー事務所長の野寄真市さん①

ホンダがミャンマーで急速に2輪車の売り上げを伸ばしている。2013年のミャンマー進出以来、販売店を増やすなど販売網を拡大した。大都市を狙うのではなく、ミャンマー各地の需要を拾い上げる丁寧な販売戦略が奏功している。立役者のホンダミャンマー事務所の野寄真市所長に、ホンダのミャンマーでの販売戦略について聞いた。
――ホンダはミャンマーでは、2輪車をメインとしていますね。非常に販売が伸びていると聞いています。

 

ミャンマー事務所は2012年の12月にオープンし、私は2015年の4月にヤンゴンに赴任しています。2014年には2輪車の販売台数が約1万4,000台だったのですが2015年には約5万4,000台となり、2016年は約8万7,000台が売れました。

 

これは、今まで販売店のない空白地帯だったところに販売網を拡充したためです。2014年には約50拠点だった販売店は、2015年の1年だけで100拠点以上になり、2016年末時点では約120拠点となりました。

 

ホンダの販売店は、すべて3S(セールス、スペアパーツ、サービス)を備えた店舗です。地方都市では、街道沿いのオープンエアの店舗でバイクが売っているケースもあるのですが、故障してもパーツなどがなく、修理してもらえません。その点、ホンダの店舗はきめ細かく対応できますので、差別化が図れます。


野寄真市(のより・しんいち)さん 

 

1983年本田技研工業に入社。2輪の担当が長く、香港やイランにも駐在した海外市場開拓のエキスパート。2015年4月にミャンマー事務所の所長に就任した。

発展途上国では、バイクは過酷な状況で使用されます。ですから「壊れないこと」がキーワードになります。家族が何人も一緒に乗りますし、雨季もあります。「雨の日は乗らないでください」とは言えないのです。重い荷物は積むなとも言えません。これは性能で答えていくしかありません。

 

主力商品の「ウェーブ1000」は109万チャット(=約9万円)で販売していますが、3万5,000円程度の中国製のバイクもあります。今は低価格の中国製同士が競争をしている状況ですので、私たちは「安かろう悪かろう」という競争には乗らず、壊れない品質と、3Sでの手厚いサービスを進めていきます。

 

――すごい速さの展開ですね。どのように販売網を広げているのですか。

 

正規代理店NCXミャンマーの直営店と、地元オーナーの販売店とがあります。大規模な店舗は直営ですが、地方部では、もともと地元でバイクの販売店を手がけていた地元業者にホンダブランドの店舗を運営してもらいます。そこでも、必ず3Sを備えた店にします。

 

地方部でも、ホンダブランドは強く、「世界のホンダが町にやって来た」と話題となります。マンダレー管区のある店では、開業して45分で13台のバイクが売れたこともあります。

 

地方でホンダの販売店を経営することになると、町の名士として扱われます。管区の首相や国軍の統合幕僚長がオープニング式典に駆けつけることもあります。私はどんな暑い中でも、必ずスーツを着ていき、参加者に丁寧にあいさつをします。そうすると、日本から来た幹部のように見られますので、オーナーや政府の幹部の評価が高まります。

 

ほとんどの店舗には足を運びました。地方の空白地帯に店舗を増やしているのですから、空港からも遠く、週に何度も開所式があるときもあり、大変でした。やはり、現場を見ないことには本当のことがわかりません。例えば、2輪車が禁止されているヤンゴンばかりにいると自動車が多いように感じますが、地方都市はまだまだバイクばかりです。

 

地方によっても特色があります。例えば、あるイスラム教徒が多い都市では、家族が何人もバイクに乗るケースが多く、耐久性が重要です。壊れないホンダのブランド力は強く、「ホンダに乗ってないと恥ずかしい」との声も聞きました。また、中学生のバイク通学が事実上認められ、警察官が見守りをする都市もあるのです。こういうことは実際に足を運ばないとわかりません。

 

ホンダには現場、現物、現実を重視するという「三現主義」というフィロソフィーがありますが、これを徹底するとだんだん見えてくるものがあるのです。

 

――現在の2輪車のマーケットをどう見ていますか。

 

私たちの顧客は富裕層になりますが、いま地方の農村部にも富裕層が増えているのです。例えば、国境地帯ではコメの輸出が盛んになって、広い土地を所有する農場経営者のようなクラスが出現しています。また、海外への出稼ぎ労働者が多い地域もあります。大きなうねりがくるのを感じますね。(掲載日2017年2月3日)