インレー湖拠点に観光資源を開拓 旅行会社「ホームミャンマー」CEOの鈴木俊良さん

一般の日本人からすると、旅行先としてなじみが薄いミャンマー。そんなミャンマーの観光資源を探しだして紹介しようとしているのが、昨年旅行会社ホームミャンマーを立ち上げた最高経営責任者(CEO)鈴木俊良さんだ。だが、鈴木さんが拠点として選んだのは、ヤンゴンではなくシャン州のインレー湖のほとり、ニャウンシュエだ。どうしてそんな選択をしたのか、その狙いを聞いた。

 

――鈴木さんは、日本の旅行最大手、JTBのヤンゴン拠点に勤務したのち、独立して旅行会社を設立したのですね。しかも現在はシャン州のニャウンシュエを拠点にしています。なぜ、そんなことになったのでしょうか。

 

はい。2014年4月、JTBのアジア各国を統括しているシンガポール法人に新卒で就職し、その4か月後にはミャンマーに赴任していました。そのころはミャンマーにJTBの一番新しい支店ができたばかりで、ゼロから始められる面白さがあると思ったのです。

周りはシンガポールやオーストラリアなどを希望す

る同期が多かったので、「ミャンマー、ミャンマー

」と言っていたら、面白いやつだと思われ駐在と

なりました。支店長も来たばかりでミャンマーに

詳しいわけでもなく、あとの日本人2人は私を含

め入社したばかりでしたので、とても大変でした。

 

旅行の手配、日本向けのミャンマー紹介の資料を作ることから、お土産グッズの管理まで何でもやっていました。その中で、合弁企業の難しさも感じました。しかし、いずれ異動になるので、ほかの国に行ってまでこの会社にいようとは思わなかったのです。

 

起業しようと決めたのは、2016年4月に日本に帰国した時でした。そして、2017年に会社を辞めることと、200万円の貯金をためることを決意しました。ミャンマーでの人脈も生かせますし、元手がそれほどかからないことから、やはり旅行業しかないと思っていました。


鈴木俊良(すずき・しゅんすけ)さん 

1990年生まれ、横浜市出身。専修大学在学中に中国・雲南省やカナダなどに留学。2014年にJTBのシンガポール法人に入社後、ミャンマー勤務。2017年にホームミャンマーをシャン州ニャウンシュエに設立し、CEOに就任した。

そして、2017年の5月に退社して、8月にニャウンシュエに事務所を構えて仕事を始めました。最近オフィスの整理をしていたら、決意したころの「辞めるんだ」みたいな思いをつづったノートが出てきました。そのノートも存在も忘れていたのですが、それによるとそのころにはもうインレー湖に拠点を作ると決めていたようです。一回しか行ったことがなかったのですが、美しい山が見えるシャン州に住みたいと思ったのです。

 

――どんな旅行会社を目指しているのですか。

 

ミャンマーで最もユニークな旅行会社になりたいと思っています。単純な手配ならだれでもできるので、そうでない独自の企画を用意しています。朝の市場でシャン料理を味わうフードツアー、日本のNGOと組んだ農村訪問、コーヒー農園ツアー、未開のラショーの日帰りハイキングなどを企画しました。いずれも、ほかの旅行会社がまねをしようと思ってもすぐにはできないと思います。カックー遺跡のさらに奥地に入り込んだ「奥カックー」の農村の風景が素晴らしいので、これも準備しています。また、欧米人向けのウォーキングツアーも考えています。

 

――最近クラウドファンディングで資金を集め、交流スペースを作ったと聞きました。

 

オフィスの隣の部屋が空いたと聞いたので、クラウドファンディングで集めた資金で借りて、交流スペースとしました。観光人材育成のための日本語や英語のクラスを実施するほか、日本のアニメや映画を上映する交流会を行います。ただ、オープンイベントで停電になり、シャンコーヒーを無料提供するはずがコーヒーマシンが動かないというトラブルからスタートしました。1月から始まった日本語クラスにはすでに15人の生徒が集まっています。ホテルやレストランで働いている人や、ガイドになりたい人が来てくれていて、意外と需要があることがわかりました。こうした活動を続けていきたいと思います。クラウドファンディングは、1年分の家賃と内装費の支援をお願いしたのですが、1日で25万円の目標額を達成、最終的には31万円も集まりまして、本当にびっくりしました。私が新しいことをするというので、みんな面白がって支援してくれたようで、ありがたい話です。

 

――ミャンマーの観光業の市場環境をどう見ていますか。

 

長い目で見れば、絶対に伸びていくのは間違いないところですね。2017年はロヒンギャ問題などあり、悪かったという話なのですが、それでもインレー湖に来る観光客が多いな、とは感じていました。国内線の航空券が高いことやインフラなどの問題はありますが、改善してきているのであまり悲観視する要素はないのかと思います。ホテルの宿泊費も下がってきていますね。

 

地域から見ると、観光資源の開発が重要です。旅行者はガイドブックなどで情報を得て、計画を立てるので、ある街に何日滞在してくれるかというのは、行くところがあるかないかということなのです。コーヒー農園など「もう一日滞在したらここに行ける」という情報を発信していくのが大切だと思います。最近では、ヤンゴンでも自転車ツアーが始まり、インレーでもトレッキングツアーを始めるなど旅行者の選択肢が増えてきていると思いますね。そういうのはたいてい若い人が企画しているので、そういう人たちとミャンマーの観光を盛り上げていきたいと思います。

 

【インタビューを終えて】

ヤンゴン駐在を経て現地で起業するケースは昔もあったと思うが、最近はその年齢が下がってきているように思う。鈴木さんは、新卒でミャンマーに赴任して3年弱で独立、現在28歳だ。こうした若い発想で企画するツアーが、ミャンマーの旅行を盛り上げてくれるに違いない。まだまだ外国人に知られていないものが眠っているミャンマーで、鈴木さんがどんなツアーを生み出すのか、今後が楽しみだ。(掲載日2018年2月2日)