ITはサービス競争の時代 「EC、近くキャズム超えも」 アクロクエスト・ミャンマー・テクノロジー支店長の寺田大典さん

新しいITビジネスの拠点としてヤンゴンが注目されて久しい。進出企業の中でも、ユニークなサービスを開発しているのがアクロクエスト・ミャンマー・テクノロジーだ。消費者動向をつかむためのポイントアプリを運営するほか、タクシー配車アプリなどの開発を手掛ける。ミャンマーのIT業界で何が起こっているのか、同社の寺田大典支店長に最新事情を聞いた。

 

――アクロクエストはミャンマーで多数の事業を手掛けていますね。

弊社は日本向けITシステムのオフショア開発と、ミャンマー向けの企業のシステムやアンドロイドアプリなどの開発を行っています。割合としては、日本向けとミャンマー向けが半々くらいですね。

 

ミャンマー向けには、サイボウズのクラウドを利用した業務用アプリサービス「キントーン」を販売しています。これは、3G回線でも快適に動くほど軽いシステムとなっていて、ミャンマーでも問題なく使用できます。

 

携帯電話と全地球測位システム(GPS)を組みあわせたサービスにも強みがあります。ミャンマー人向けにポイントアプリ「クイックドロー」を運営し、すでに2万人がインストールしています。GPSで若者の行動範囲を調べたり、アンケートを採ることで、市場調査ができる仕組みです。かつてはジャンクションスクエアばかりに若者が固まっていたのが、現在はミャンマープラザがある
インヤー湖畔や、ダウンタウンなどに分散してきていることなどがわかり、マーケティングの観点からすると興味深いデータが採れます。

 

――昨年あたりから電子商取引(EC)も大変注目されてきていますね。ミャンマーの新しい物好きが飛びついている気がします。


寺田大典(てらだ・だいすけ)さん1974年生まれ。2000年にアクロクエストテクノロジー入社。2012年5月に来緬して現地法人を設立、現在はヤンゴンの社員27人にまで規模を拡大した。
そうですね。ミャンマー全体というより、ヤンゴンの500万人の消費者を考えた方が良いと思いますが、その人たちは購買力があり、ビジネスにつながりやすいと言えます。ミャンマーのECでは、決済の問題がありますが、これはモバイルバンキングなども普及してきて解決に向かっています。クレジットカードよりも、モバイルバンキングの方が普及が早いと思います。

 

多数のECサイトがサービスを始めていますが、今の段階ではおそらく利益が出ているところはないと思います。今はシェアを獲得するため、身銭を切っている状態ではないでしょうか。

 

自転車での料理の宅配など人気のサービスも出てきています。こうした成功例では、この1~2年で「キャズム」を超えてくるのではないでしょうか。

 

――珍しいものが好きなアーリーアダプター層だけでなく、一般人も使うようになる普及率16%程度の壁がキャズムですね。そう考えると、普及のスピードは速いですね。

 

この1~2年の変化はとても速いです。すでにITはインフラではなくサービスの競争に入っています。ECサイトや配車アプリのように、新しいサービスが次々とリリースされています。いかに消費者にとって、便利なシステムを作ることができるかという点が勝負になってきます。

 

私のところにも、ミャンマーの起業家から「こういうビジネスがしたいのだが、システムを作れるか」という相談があります。確かにそれは可能なのですが、インフラも整備されていて顧客がアプリに慣れている日本とは違い、ミャンマーでは普及のためのプロモーション活動や、関係者のトレーニングなど莫大な投資が必要になります。その消耗戦に生き残る体力がある会社でないと成功は難しい市場環境になっていると言えるでしょう。

 

【インタビューを終えて】

 IT業界の住人らしく、次々とアイデアを繰り出す寺田さん。ミャンマーではこれから、様々なITサービスが浮かんでは消えてゆく大競争時代に入るのだろう。自ら手を挙げてまだインフラも整っていないミャンマーに赴いた寺田さんのもとには、ミャンマーの若手起業家からも相談が寄せられるという。まだよちよち歩きのミャンマーのIT業界で、今後も存在感を示してほしい。(聞き手は北角裕樹)(掲載日2017年3月17日)