失われゆく伝統工芸をブランド化したい 雑貨店「dacco.」立ち上げた和田直子さん

ミャンマー各地の伝統工芸が危機に瀕している。そんな中で、各地に伝わる伝統技術の魅力を発掘しようと奮闘しているのが、雑貨店「dacco.」を経営する和田直子さんだ。所狭しと並ぶ店内には、チン族の伝統織物で作ったポーチや、バゴー産の木工細工の食器、ロンジーの生地を利用したワインバッグなどがずらりと並ぶ。少数民族の地域で受け継がれてきた伝統を、現代風にアレンジした商品だ。NGOの職員として働きながらミャンマー中を駆け回って新しい商品を開発している和田さんに、このビジネスを手がける理由を聞いた。

 

――店の内装や展示の仕方がとても凝っていて、雰囲気がありますね。細部にまで気を使っている様子を感じます。どんな思いで雑貨店を開いたのですか。

私の店では、なるべく人の顔が見えるようにしたいと思っています。どんな人が織った布かが伝わるように努力しています。また、伝統のデザインには、口伝えで伝承されてきた意味があるのです。例えばこのデザインは子犬の牙だったり、カボチャの花だったりします。こうしたことを伝えることで、楽しんでもらえたらと思います。

 

ミャンマーにも、こんなにいいものがあるということを知ってもらいたいと思ったことが店を開いた動機です。実は外国人だけではなくて、ミャンマー人も自分たちの持つ伝統工芸の素晴らしさを知らないのです。店舗にある商品の多くは、地方の市場などでひっそりと売られていたものを掘り起こして、デザイン性を持たせたものです。今まで広く出回っていなかった工芸品ですから、それに価値があるとは思っていなかったのだと思います。

 

職人さん自身も大切さに気づいていない場合もあります。例えば、違う柄の生地の発注を大量に受けたため、自分の地域の伝統デザインの柄の布を織らなくなってしまった村がありました。また、後継者不足も深刻です。この問題は、伝統工芸の職人さんが正当な対価を受け取っていないことが一因です。


和田直子(わだ・なおこ)さん

 

雑貨店「dacco.」代表。2003年に渡緬した後に開発NGOの職員としてキャリアを積む。2011年ごろから雑貨のプロデュースを始め、2015年に店舗を構えた。

こうした伝統技術を活用して現代に通用するデザイン性の高い商品を作り、広く知ってもらうことでブランド化することを目指しています。いい商品を高く買ってもらうことで、伝統工芸が産業として成り立つようにしたいと思っています。そして、職人の父親が制作する姿を見て、子どもが自分も職人になりたいと感じてもらいたいと思います。

 

――新しい商品を求めて、ミャンマー全土を渡り歩いているそうですね。商品開発と言っても、なかなか苦労のあることと思います。

 

現在ヤンゴンをはじめ、シャン州やカレン州、ラカイン州などの20数団体から仕入れていますが、だいたいは生産者や取引先に足を運んでいますね。伝統工芸品でも、そのままではなかなか外国人には興味を持ってもらえないものも多いので、こちらで「この布でこういったバッグを作ってほしい」などと企画して依頼します。

 

私が求めるのと違うイメージだったり、品質的に水準を満たさなかったりすることもありますが、それでも発注したものは全量を買い取ります。その代り、「ここの紐がほつれている」などと丁寧にフィードバックを行うことで、生産者の意欲をそがない形で完成度を上げることを目指しています。買い取って商品にできないものは、私が使うなどして有効活用しています。

 

店舗はたくさんの人にご協力いただいています。商品づくりに詳しい方や、カメラマン、販路開拓など多くの方にお手伝いいただいています。おかげさまで、日本のデパートの催事でも、カチン族の織物を使った巾着袋や、タッティングレースのアクセサリーなどを取り扱ってもらえるようになりました。

 

――ミャンマーの伝統工芸を守るためはどうすればいいのでしょうか。

 

そうですね。例えば、政府機関や業界団体が音頭をとって、職人の表彰制度を作ってはどうでしょうか。素人にはきちんと伝統にのっとって作った商品と、安い粗悪品との違いが分かりづらいですから、ブランディングも大事になってきます。

 

dacco.のような店が増え、おしゃれな商品がたくさん生まれて、ミャンマーの工芸品に注目が集まれば、需要が拡大して生産者が正当な対価を受け取ることができるようになります。同業者を競合として考えるのではなく、一緒に伝統産業を活性化させることができればと思っています。

 

【インタビューを終えて】

ロンジーの素材として市場で売られている身近な手織物でさえ、中国など周辺国の安価な工業製品に押され、苦境にあると言われる。工業製品は良質なうえ、一日に数十センチから数メートルしか織ることができない手織物と比べてはるかに安い。貿易が活性化し海外製品が流入する中で伝統工芸が生き延びるためには、その魅力をアピールし、今までにない需要を開拓していくしかない。

 

その意味で、ミャンマーの伝統工芸と、外国人の感性がミックスすることで、新たな商品を生み出そうとする取り組みは重要だ。ベトナムでは、伝統のバッチャン焼きが現代的な製品としてデザインされ、観光客に人気を博している。和田さんが現場で発見した伝統工芸から、次にどんな商品が生み出されるのか、今後も注目したい。(掲載日2017年1月20日)